2019/10/12 12:49




内野隆文
「ラッシュアワーバード」
2019年
古い紙にアクリル、ペン
作品サイズ :  19.3×12cm
額サイズ : 24×18cm




1800年代のドイツにて活版印刷で刷られた古い本のページに描いた作品です。
第4回個展「Takafumi Uchino -Rush Hour People-」に出品した象徴的なシリーズです。

アンティーク品ならではの経年変化と、現代アートのコラボレーションをお楽しみください。




Rush Hour People



目覚めたときには確かにあった夢の感触はとうに消え失せた。

儚い星が空に残る頃、淡い夢を見ていたはずなのに。


私は電車の車両に押し込まれて運ばれる顔のない人間となる。

駅から駅へと運ばれて、時間から時間へと飛び移る。

私は時間と敵対し、回され続け、回り続ける歯車となる。


夢の手触りを求めたところで、

夢は現実から逃れるための道具ではないのだ。


時は戦車の勢いで迫り、歯車はすり減り続け、

馬車馬のように走り続けて、いったいどこにたどり着けるのだろうか。

時間から時間に転がり落ち続けた果ての荒野にも、

夜には星が瞬くのだろうか。


都会の夜空の星たちは、

そびえ立つ摩天楼に空を奪われて所在なく、

都会の夜空の星たちは、

街の光に飲み込まれて消えてしまいそうなほど儚い。


我々が気にも留めず忘れてしまっても、

ビルに切り取られた小さな空に、星はいつも瞬くのだ。

何も語らず、ただ小さな光で私たちを励ましながら。


私は回り続け、すり減り続ける歯車だ。

もちろん夜空の星にはなれないし、画家ですらない。

星の瞬きには遠く及ばずとも、

せめて私は、生き急ぐ僕たちに万感の思いを込めて喝采を贈るのだ。



内野 隆文